●ジョン・ストット師 鎌田泰行(関東地区主事) |
皆さんは自分の親に似ていると言われたことはありますか?私の集う教会には私の父と職場が同じだった方がいるのですが、私が話をしている様子を見て「口調も仕草も、本当にお父さんにそっくり!」と思われたそうです。親の影響力は大きいものだと思います。
同じように、多くのクリスチャンに影響を与えた人としてジョン・ストット師がいます。かつてNew York Timesにこんな論評が載りました。
「ストット師の書いたものを読むと、そこに独特の口調があることに気づきます。飛行機のパイロットはみんなチャック・イェーガーみたいな口調で話すようになるとトム・ウルフは言っていました。それと同じように、ストット師のような口調で話す多くの福音的クリスチャンと私は出会って来ました。・・・それは親しげで、礼儀正しく、自然な口調です。謙遜で、自省的でもありますが、確信と喜びと前向きさのこもった口調でもあります。ストット師の使命は様々な障壁を貫き、イエスとの直接的な出会いをもたらすことです。福音の中心はイエスの教えではなく、イエスその人、神であり人でもある方だとストット師は言います。彼はいつも現実にあったイエスの人生と犠牲という出発点に人を呼び戻すのです。」(注1)
ストット師はその多くの著作を通して世界中の教会リーダーたちに影響を与えました。また、「ジョンおじさん」(Uncle John) というあだ名が示すように、彼自身との人格的な触れ合いを通して影響を受けたという人も世界中にいます。スリランカのアジス・フェルナンド師はこう言いました。
「彼は謙遜が服を着て歩いているような人でした・・・世界が注目するような大きなプログラムのためでなく、聖書を教えるためだけに時間を費やして貧しい国に来てくれたことを感謝しています。」(注2)
このストット師はKGKとも無関係ではありません。学生伝道は師にとって重要課題の一つで、KGKも所属しているIFES(国際福音主義学生連盟)の副総主事を1995年から2003年まで務められました。またKGKが大切にしている聖書講解は、ストット師も大事にされたものでした。(注3)
残念ながらストット師は先日7月27日に天へ召されました。90歳でした。私は直接お目にかかったことはありませんし、著作も僅かしか読んだことがありませんが、インターネット上に掲載されるさまざまなおくやみの文章を見て、師の業績、そして人格に思いを馳せました。
師のなくなられた日、代表的著作Basic Christianity(『信仰入門』)を読みました。その中で以下の箇所が印象に残りました。
確かな関係
この神との親密な関係(訳者注:救いによって神の子とされたこと)に入り、また神ご自身のことばがこれを保証するとしましょう。では、これは安心出来る関係なのでしょうか。(中略)「罪を犯したらどうなるんですか?」「そのせいで神の子としての資格を失ってしまうのでしょうか?」と訊かれるかもしれません。いいえ。人間の家族を考えてみましょう。子どもが両親に対してとても失礼な態度をとったとします。暗雲が立ちこめます。気まずい空気になります。父と子はしゃべらなくなります。何が起きたのでしょう。少年はもはや息子ではないのでしょうか。いいえ。二人の間の関係は変わっていません。しかし交わりが壊れたのです。関係は生まれによるものです(傍線訳者)。交わりは振る舞いによります。少年が謝れば、ただちに彼は赦されます。そして赦しは交わりを回復させます。一方、関係は同じです。彼は一時の間不従順で反抗的でさえあった息子ですが、息子であることに変わりはないのです。(注3)
神の子とされたという確かな関係が信仰によってストット師に与えられていて、そして私たちにも与えられているのだな・・・そんなことに思いを馳せたひとときでした。
これを読まれている皆さんの夏はどんな夏になるでしょうか。キャンプ?時間があるから信仰書を読む?デボーションを立て直す?どのように過ごすにせよ、この夏が「神の子としていただいている」ことの確信と喜びが満ちあふれる時となりますように。そしてそのことが皆さんのみならず多くの人の幸いにもつながりますように。
あなたがたは、 人を再び恐怖に陥れるような、 奴隷の霊を受けたのではなく、 子としてくださる御霊を受けたのです。 私たちは御霊によって、 「アバ、 父」と呼びます。私たちが神の子どもであることは、 御霊ご自身が、 私たちの霊とともに、 あかししてくださいます。(ローマ8:15,16)
注1 ニューヨークタイムズ紙2005年11月30日号のデイビッド・ブルックス氏によるコラム「ジョン・ストットとは誰か」 (Who Is John Stott) より。引用と訳は以下より。 http://andyunedited.ivpress.com/2011/07/john_stott_in_memoriam.php
注2 クリスチャニティ・トゥデイ誌2011年7月27日「ジョン・ストット師亡くなられる」(John Stott Has Died) http://www.christianitytoday.com/ct/2011/julyweb-only/john-stott-obit.html
注3 ラングハム・パートナーシップ「ジョン・ストット師略歴」(Biography: The Rev. Dr. John R. W. Stott) http://www.langhampartnership.org/john-stott/biography/
注4 ジョン・ストット『信仰入門』(Basic Christianity). 2006年版170ページより私訳。 ちょうど手元に邦訳がなかったので、一旦私訳で掲載させていただきます。『信仰入門』はかつてすぐ書房、そしてそれより前にはKGK出版局から出ていました。残念ながら現在絶版ですが、皆さんの教会図書館などにもあると思いますので、ぜひ探してみて下さい。